怠惰な自分を更に甘やかした生活を送っていたら、脂肪という名のおまけが付くようになった。
食事というのは厄介なもので、自分の好みに合わせて、食い散らかせば、健康体という名の武器を無くし、盾にもならない脂肪が身につく。
食事は、作業。
そう思うようになったのは、いつからだろう。
食欲が退化し、偏食に拍車がかかったのは、一人暮らしを始めてからではなかったはず。
実家にいる頃から、食事が酷く面倒に感じるようになってしまった。
飲食店で働いているにも関わらず。
酷く面倒な作業も、胃に入れなければ、胃袋から荒々しい音が鳴り響くので、仕方なくこなす、という具合に、毎日の食事を片付けていた。
そんな頃もあった、と思うようになった。
ここ数年で、私の精神面は少しずつ、それでも大きく変わってしまった。
それが嘆かわしいことなのか、はたまた、喜ぶべきものなのかは分からないけれど。
数年前まで、日々を絶望し、飽きていて、何か刺激を求めるものの、行動には移せなかった。
今では、多少の悩みはあるけれど、毎日の仕事もこなし、プライベートの時間ものんびり過ごせるようになった。
心の平穏は、きっと食事に現れるのだろう。
今では、見た目が美しいケーキや良い香りのする料理に目が惹かれるようになった。
不思議、とても。
相変わらず、胃袋の許容値は低いけれど。
だからこそ、1回の食事を大切にするようになった。
ポピーシードが散りばめられたレモンケーキ。
艶やかなソースが絡まるパスタ。
色とりどりのフルーツが飾られたタルト。
香ばしいネギが香るチャーハン。
少食なりに、偏食なりに、健康に気を遣った目にも美味しい料理を探す毎日。
増えたのは、下腹に溜まる脂肪だけではないはず。きっと。
心の平穏と、脂肪のバランス。
「どうせ食べるなら、美味しいものを。」
そう思えるようになった私を数年前の私は、きっと軽蔑の眼差しで眺めるだろう。
そこに、僅かながらの羨望も含まれていると知らずに。