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月に一度の文字並べ

春のこわいもの

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6月は自分の誕生月ということもあり、すっ飛ばしてしまいましたが、下半期に入ってきたので、気を取り直して、また散文を書き散らしていく所存。

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春のこわいもの。

春を怖いと思ったことがないので、不思議なテーマだなと、率直に思った。花粉症持ちの方は、それはそれは恐ろしい季節なのだろうなと思うのだけれど、私にもその感覚は有りつつ、それでも冬が苦手な私にとって、春の訪れは心躍る季節。暗く冷たく長いようで短い冬が終わり、ほんのりとした暖かさと、木々や花々の色味が街並みにほんのりと色をつけていく季節。

蟻がちらほらと歩き始め、野良猫が植木の合間から顔を覗かせ、重たい上着を脱ぎ捨てて、身軽になれる季節。

 

そんな中でも、こわいもの。

それはきっと環境の変化と、変わり者の目覚め。春は出会いの季節とは、よく言いすぎた言葉だなと。出会いを求めている人にとって、環境が変わり、人の入れ替えがあり、期待に胸が膨らむ。しかし、私にとって、環境が変わることは、多かれ少なかれ、ストレスに感じることが多い。これは恐らく、幼少期からの人見知りが原因なのだと思うけれど。

 

春一番が吹き、髪が乱れることでただでさえ、櫛を通すことに精一杯の私に、新しい人との出会いや慣れ親しんだ人との別れは、しんどさを与える。別れということに大きな感情の起伏は起きないけれど、何故か新しい人との出会いは、緊張で胃がキリキリと傷んでしまう。職業柄、春でなくとも、同僚の入れ替わりは起きるのだけれど、特に春は学生時代のそれを思い出してしまい、余計に心労として蓄積される気がする。何故だろう、長年の不思議な感覚。

 

そして、春は自然の目覚めと同時に、不思議な人たちも目覚める。週に一度だけ、バーテンダーもどきをしている身としては、有り難迷惑な話。一見すると、何も害のないような人がニコニコと愛想笑いをして、お店に入ってきたかと思えば、一度アルコールを口に含むと、手品でもしているのかというくらいに人が変わることがある。怒鳴り散らすこともあれば、女性軽視発言をして相手に不快感をもたらすこともあったり、お金を払わずに眠りにつこうとする輩もいる。

 

不思議なもので、何故か春になるとこういう人たちは浮き足を立たせて、街を歩き始める。

不快な気持ちも苛立つ感情も、一日と経てば、愉快な出来事として、人に話すことはできるのだけれど、新しい出会いが苦手な私にとって、疲労が溜まるだけの出来事。

 

寒い冬を乗り越えて、暖かな陽射しとほんのりと彩りのある自然の芽吹きを喜ぶのは、きっと生き物すべての業。

冬を愛せない人への戒めなのかもしれないと思いつつ、早く夏が来ないかと、私はソワソワし始める季節。


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